社会的弱者 住宅確保
社会的弱者 住宅確保

⾼齢者や障がい者の住宅斡旋に積極的に
取り組まれていますが、
どのような経緯で始められたのですか?
私は、20歳で会社を創業し、すでに35年が経ちます。その後、多くの会社を起業しましたが、⼈材派遣会社を興して25年、不動産業を始めて10年くらいになります。メイクホームではこれまで10年間、⼤⼿ハウスメーカーが建てた賃貸物件の管理と⼊居者に対するクレーム処理やリコール対応を全国で⾏っています。ただ、管理といっても当社は1棟をまるごと管理するのではなく、その管理会社の物件の中で困難な案件、いわゆる問題のあるお客様の対応をしています。賃貸物件は新しいうちは若いかたが⼊り、⽀払いも滞らず、回転も良いのですが、25年くらい経ち、物件が古くなると⼈が⼊らなくなってきます。そうなると⾼齢者や、⽣活保護を受けているような収⼊が低い⼈を⼊居させざるを得なくなります。すると、”家賃を払わない”、”ゴミ屋敷にする”、”⾏⽅不明になった”などのクレーム処理の相談が当社に来るようになります。そのような状況と、問題を起こす⼈の対応を得意にしてきたことから、⾼齢者や⽣活保護者向けの⼊居⽀援をすることにしました。
また、場所を選定するにあたっては、東京の西エリアを新宿区の早稲田店に、東京の東エリアを足立区の綾瀬店に致しました。

住宅確保要配慮者の斡旋は、なかなか取り組みが進んでいないのが実情です。
年齢的に65歳を超えると⾼齢者といわれて、⼊居を申し込んでも断られてしまうのが現状です。しかし逆に考えると、65歳以上の⽅の住宅需要が⾼まっているということになります。綾瀬駅前にも不動産会社はたくさんありますし、当社は開業して10年程度の後発企業ですので、普通にやっていたら負けてしまいます。そこで、顧客ターゲットを⾼齢者にすることに決めました。また、社会的弱者の⼈を助けたい気持ちも当然ありました。私の知り合いにも障がい者がたくさんいますし、グループの建築会社でも障がい者を雇⽤しています。⽣活保護者や⾼齢者と同様、障がい者も借りられる部屋が全くないという現状があります。
当社は⼊居者が通っている病院や病状を把握しており、緊急連絡先協会カードを⾒て救急⾞から当社に連絡が⼊ると、今までの病状や症状を伝えることができます。その結果、救急隊も病院も対処の⽅法が事前にわかり、処置までの時間が短縮できます。また⼊居者には、亡くなることを前提に了承して頂き、機械を設置させてもらっています。万⼀⼊居者が亡くなったとしても、⼈感センサーが⼀定時間感知しなかった場合にはメール受信者が駆けつけられるので、孤独死を⻑時間放置することを防ぐことができ、オーナーも安⼼です。さらに外出時は不法侵⼊者が侵⼊すると、警告⾳を鳴らし、メールで通知する機能があり、防犯上も安⼼です。

具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
当社の安全対策の取り組みとしては、1つ目が⺠間の業者と契約して、⾸から下げる⾮常連絡⽤のボタンを⾼齢者に持たせていることです。もし、⼊居者が部屋の中で倒れてボタンが押されたときには、「○○さん、どうされましたか?」と部屋の中のスピーカーから声が発せれます。応答がない場合は、親族・ホームへルパー・当社の3ケ所に⾃動通報の形で連絡が⼊り、駆けつけられる⼈が駆けつけ、さらに緊急性を感じた場合は救急⾞を呼ぶことになります。このボタンがあることによって⾼齢者はいざという時にも安心して⼀⼈暮らしができるようになります。過去の例でも、本当に苦しい場合は電話することさえもできないため、救急⾞も呼べずに亡くなっています。しかし当社の場合はボタンを押すだけなのでハードルが下がります。2つ⽬が⾒守りセキュティ端末の導⼊、⼈感センサーが監視、⾒守りを致します。⼈感センサーが⼀定時間感知しないと、⼊居者に間題が発⽣したと判断します。⾮常ボタンが押されると⼤⾳量のアラームが鳴り緊急メールを送信します。コールセンターへの要請で、警備スタッフが現地へ駆け付けます。⽞関にはキーボックスをつけているので、本⼈に連絡が取れない場合でも救急⾞にキーボックスの番号を伝え、部屋に⼊ってもらいます。さらに、⼊居者は連絡先として当社のカードを持っています。⾼齢者などの保証⼈の問題はどう対応されていますか?
基本的には家賃保証会社を全て使います。
契約の前に「万が⼀の場合は当協会の判断で家財を処分する許可を保証会社に通知します。」と確認して進めています。合同会社緊急連絡先協会とは、賃貸不動産契約に伴う緊急連絡先となるサービスを提供している企業です。⾝寄りのいない⽅、ご家族と疎遠になられている⽅なども対象としております。

また、家賃保証会社や⽕災保険会社とは直接交渉をし、当社向けの独⾃の商品をつくってもらいます。具体的には、亡くなった場合に家財や遺品処分費⽤を⼿厚くしてもらうような商品です。さらに年齢が⾼くなると物を壊してしまうケースも増えますので、⾃分で壊した時でも保険がおりるような商品もあります。家賃保証会社も⽕災保険会社も先⽅から提⽰されたままの商品に変えることができます。なお、今使っているのはあくまでも当社向けの商品ですが、他の不動産会社で⾼齢者の⼊居幹旋のために使いたいということであれば、喜んでご紹介します。


障がい者や⽣活保護者の⼊居⽀援に取り組む。
⾼齢者だけでなく、障がい者のための住居の幹旋も⾏っています。お世話しているのは、⾝体的な障がいを持つ⽅です。⾞椅⼦の方の⼊居は23区ではほとんど全て難しいのが実情です。⾞椅⼦の方は病院から直接相談が⼊りますので、本⼈を迎えに⾏くところから始まります。まず病院に⾏き、看護師と⼀緒に本⼈がどこまで⼀⼈でできるのか、どんな状態なのかなどについて話を聞きます。その後、1週間くらいかけて物件を⾒つけ、物件の内⾒には⾞に⾞椅⼦を乗せて、本⼈とヘルパーと当社のスタッフ3⼈で⾏きます。基本的に賃貸物件は⾬が降った時に⾬⽔が⼊らないよう⼊⼝に数cmの段差があります。それを解消出来ないと⾞椅⼦の方は⼊居できません。さらに、電動⾞椅⼦の場合は外に置く場所が必要になりますので、⾞椅⼦を置く場所の有無も確認します。その上で、看護師にも部屋の中を⾒てもらい、部屋の中で転んでしまう可能性のある危険な箇所をチェックしてもらいます。⽚⾜切断された方もいますし、脳卒中の方もいらっしゃるのでそれぞれ対応が異なります。そして物件を気に⼊ってもらえれば、当社の建築部⾨が現地に⾏き段差解消やトイレやお⾵呂の⼿すりの⼯事の⾒積りをとり、⼊居者本⼈が負担できるのか、負担が難しい場合にはオーナーに半額でも負担してもらえないかと交渉をします。オーナーには、「今後⾼齢者や⾜が不⾃由な⽅が増えるのだから、先のことを⾒越して投資してくれないか」と説得をします。そして、合意すれば⼯事を実施して⼊居してもらう、といった流れです。そのため、病院から連絡をもらってから⼊居するまで1〜2ヶ⽉かかります。⼿すり等の造作物については、オーナーが柔軟な方の場合は残してもいいと⾔われますが、そうでない場合は退去後撤去するという契約を結びます。そこまで交渉をしなくてはなりません。また、脳卒中の方などは⼊退院を繰り返し、リハビリをしている間にお⾦がなくなってしまう場合が多いので、⽣活保護の申請も必要になってくる場合があります。

⽣活保護の申請の⼿伝いもしているのですか?
近くに⾝寄りがいない方の場合は⼀緒に役所に⾏くこともあります。本当に⾝寄りのない方の場合は最終的に私が連絡先になって葬式まで⾯倒を⾒るようにしています。連絡先になるということは本⼈の⽣活の⾯倒を⾒ることになりますので、親戚のような位置づけです。ただ、この仕事は障がい者や⽣活困窮者に対する理解がないとできません。本⼈のカウンセリングをできることが必要になります。私が⾏ってきたクレーム処理の対応は相⼿の話をまずとことん聞き、話し合いを通じて納得してもらうという⽅法で解決してきました。路上⽣活者や⽣活保護者は外でつらいめにあっている方もいます。まず本⼈の状況を聞くことが重要です。⾔葉を間違えたら⼀⾔で彼らは傷ついてしまいます。⼀⽅、⼀般の⼈でも外に出ればつらいことを⾔われたり、ハードな仕事をしている⼈がいるということも伝えます。そうして本⼈と折り合いをつけていきます。物件探しについても、マーケットの状況を説明して本⼈の希望条件を変えてもらい、⼀⽅でオーナー側にも募集賃料を下げてもらい、ぎりぎりのところでマッチングします。今⽇これから会う⽣活保護者の場合は、他の不動産会社で、「⽣活保護で連絡先もないのなら審査が通らない。だから内⾒する前に審査を通してから」と⾔われ、「審査が通った」と連絡をもらったとたんに⾒てもいない物件を勝⼿にあてがわれたそうです。「通らない審査を通したのだからうちが紹介する物件に⼊れ」と⾔われたそうで、その方はそこを断って当社に来ます。
また、本⼈のヒアリングも徹底的に⾏います。家族関係や現在の状況を聞き連絡先がないと⾔っている⼈でもよくよく話を聞くと、実はいる場合があります。その場合は直接連絡をして「連絡先ぐらいにはなってくれ」と説得をします。先⽇も27年間息⼦に会っていないという方がいて、その息⼦さんに私が電話し、状況を説明して「年齢的に最後だから連絡先になってもらえませんか」と話したら、「わかりました、⽗のことをよろしくお願いします」と連絡先になってくれました。当社の従業員も同様のことをやっています。皆、優しい⼈ばかりです。この仕事単体では実際に儲からないし、儲かる予定もありませんが、他の事業の収⼊があるのでなんとかやっています。
⽣活保護者の⼊居を拒むオーナーも多いのではないでしょうか?
⽣活保護者がだらしない、というのは偏⾒です。⽣活保護費をパチンコなどに家賃分まで使い込んでしまう⼈は全体の1割にすぎません。しかし、⽣活保護者に偏⾒を持っているオーナーには説得しても無駄なので説得しません。
むしろ、⽣活保護者かどうかというよりも、65歳という年齢でまずダメと⾔われてしまう、それこそが問題です。65歳という年齢の障壁があり、⽣活保護の障壁はそのあとです。それらを⼀つずつ取り除いてもらえるようにオーナーを説得して物件を確保しています。
むしろ、⽣活保護者かどうかというよりも、65歳という年齢でまずダメと⾔われてしまう、それこそが問題です。65歳という年齢の障壁があり、⽣活保護の障壁はそのあとです。それらを⼀つずつ取り除いてもらえるようにオーナーを説得して物件を確保しています。

協⼒してくれるオーナーはどのようにして⾒つけているのでしょうか?
物件は空きアパートを⾒つけたら謄本をとり、オーナーを探して直接交渉します。オーナーの説得は⾮常に⼿間がかかります。障がい者の場合、内⾒や事前に段差や階段のリフォームの確認など契約までに何回も現地に⾏きますし、オーナー⾯談には本⼈も連れて⾏くのでコストもかかります。ただ、⼀度⾼齢者を⼊れて問題がなければオーナーは⼤丈夫だと思ってくれて、その後はセンサーをつけるなどの協⼒を積極的にしてくれるようになります。当社なら他社と違い孤独死防⽌の仕組みがあり、リスクが減ると思っていただけます。当社が斡施した⾼齢者の平均⼊居期間は8年です。若い⼈と違い⻑く住んでくれますので、事故にならないようにうまく防⽌して、もし亡くなったとしても不審死扱いにならず、その処理をきちんと安価でできるようにすればオーナーは安⼼です。あと数年もすれはどこも⾼齢者だらけになり、いずれ私たちはその問題に取り組んていかなければなりません。今は室内での監視だけを⾏っていますが、今後は靴底にセンサーをつけるなどIT技術を使い、部屋の外でも探しにいけるようにするということも考えています。孤独死をなくすだけでなく、万が⼀の場合には1分でも早く発⾒して駆けつけるようにしなくてはならないと思っています。
年間どれくらいの方の⼊居斡旋をしているのでしょうか?
毎⽉平均すると50⼈程度、年間トータルで600⼈くらいの⽅の住宅を斡施しています。そのうち7割が⾼齢者や障がい者で、しかも⾝寄りのない⼈がほとんどです。⾞椅⼦の方の斡施は他社がやらないので当社が⼀番多いと思います。また、⼊居後も⾼齢者には必ずヘルパーをつけており、元気な方でも定期的に訪問してもらっています。また、病院に対しても当社が障がい者を受け⼊れることについて定期的にDMで伝えています。そのため、脳卒中のことや⾜の切断の場合リハビリにどれくらいの期間がかかるかなど、病気のことについてはスタッフ全員で勉強します。そうしないとオーナーに説明できないし安⼼させられません。これからの展開について教えてください。
⾼齢者や障がい者への住宅の斡旋は、⾜⽴区や新宿区以外にも広げていきたいと思っています。⽣活保護者はできるだけ各地域の方にお願いしていますが、障がい者は当社しか扱っている会社がなく依頼が⼊ればこちらから病院まで迎えに⾏き、その地域で内⾒までするため⼈件費と交通費が⼤変です。当社スタッフが、病院や社会福祉法⼈まで迎えにいくことまでしていますので、どうしても効率が悪くなり多くの方のお世話ができません。確かに東京23区以外なら古くて安い物件はたくさんあります。23区は家賃が⾼く、⼊居希望者も多いので、オーナーや不動産会社は無理して⽣活保護者や⾼齢者をいれなくてもいいと思っています。例えば隣のまちの千葉県松⼾市と⾜⽴区では⽣活保護費の差は数千円と少しですが、家賃になるとものすごく差があります。郊外だと逆に⽣活保護の住宅扶助額まで家賃が上げられる場合もありますので、オーナーに承諾をとるのは難しくありません。そのため、⽣活弱者が家を⾒つけにくい23区をなんとかしなくてはならないと思います。今⽇も新宿の⽣活保護者を⼊れるために新宿区の物件をレインズで調べましたが、5万以下の単⾝者⽤で⾵呂がある物件は1件もありません。彼らを助けるために他の21区にも出店したいと思っています。事業概要
メイクホーム(株)は2010年創業、創業者で現社⻑の⽯原幸⼀⽒は20歳でベンチャー企業を⽴ち上げ、現在まで多くの起業をしており、上場企業の役員や起業した会社を50億規模までに育てた経験もある。事業として⼤⼿ハウスメーカーのリコールやクレーム対応を全国的に⼿がけるなかで、築古物件の空室が埋まりにくい状況にありながら、社会的弱者の住宅確保が困難という社会的矛盾を解消すべく、不動産会社を⽴ち上げ、⾼齢者や障がい者、⺟⼦家庭、⽣活保護者などの住宅の斡旋に取り組む。病院や福祉事務所に直接本⼈を迎えに⾏き一緒に部屋探しをするとともに、⽣活保護者に対しては相談窓⼝を設け、申請⽅法のアドバイスもしている。



